牛さんと共に 牛さんへの想い 2023年6月21日再編
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栃木県には黒毛和牛の子牛の矢板家畜市場があります 県内に一カ所の子牛市場は全国的に珍しく 通常は一つの県に数カ所の市場がありその市場により牛の特性も違います

和牛はその生産県に於いて特徴があり その特徴は重要です

系統的には雌雄牛で 肉質の但馬牛 体積系の鳥取・島根・岡山牛 現在人気の宮崎・鹿児島牛 中部では岐阜飛騨牛 東北では山形・岩手・宮城牛 などなど

栃木県は独自の雌雄牛を持たない県です 主に家畜改良事業団の種を使っていますが実際には全国の名牛と言われる雌雄牛の種の子牛が生産されて市場に出荷されています 市場性の高さが理由です

栃木県の和牛の素牛導入の歴史は 昭和40年〜50年代は広島県庄原市場や三次市場から経済連を通して導入が盛んでした 体積と肉質を兼ね備えていました 雌雄牛は 第9稲実 乙社6 友田8 古い雌雄牛ですが懐かしい名前です 夫も実際に広島に買い付けに行ったことがあり その時の子牛の生産者との交流は今も続いていて 子牛が取り持つご縁です

その後 子牛の導入は島根県に移り 糸桜系は肉質が良く長い年月人気が続いていました

その後 鹿児島県宮崎県に移り 現在は優良種雄牛もバリエーションが多くニーズもさまざま

そして先端技術の普及 一本の貴重な精液から同じ血統の子牛が南東も生まれる受精卵の技術が確立されています 生まれた子牛のDNA検査 ゲノミック検査で育種化が解り子牛の能力も解析されるようになりました

和牛界は最先端技術が駆使されている業界なのです

牛さんと共に  2009年10月10日記

10月10日 朝 めすの子牛が生まれました 大きくて元気です 母牛もおとなしくてやさしい性格なので 生まれた後の敷きわらを入れたり掃除したりタオルで子牛を拭いたりするわたしのそばで 静かに子牛をなめています 牛によっては出産後気が荒くなって子牛に近づいたり触ったりしただけでも人に対して威嚇して角を向けて危険な牛もいます 毎日声をかけて撫でているから 世話をしているから 懐いているからと気を抜いてはいけないのです

子牛の性格もいろいろです 近づくと逃げる子牛もいます 牛舎に入ると擦り寄ってきて 仕事にならないからどいてって言っても服をなめたり 手をなめたり 本当になついて 警戒もしない子牛もいます 朝夕世話するために牛舎に近づく私の足音 歩き癖 話し声 も聞き分けるのです

毎朝夕牛舎に入ると 「おはよう うしさんたち 元気? 変わりない? おなかすいた? 今ご飯入れるね」 と みんなの顔をみて声を掛けます キラキラ光る瞳を見ると うん!うん! と わたしも満足です

長く家族同然の いいえ 家族の生活のために生きてくれる牛さんたちは 一生を自分では自由にならない 一生一緒に生きて行きたいけれど 人間の都合でいつどうなるか解らない 牛はいつも命の不安と背中合わせで生きている それは人間も生きているものすべて言えることですが だから傍にいて世話できる間はせめて精一杯の愛情と食事と快適な空間で応えなければならないと思うのです

人間のために生まれた子牛の家畜の運命 10ヵ月になると 親や 一緒に育った子牛の仲間 住み慣れたここ を離れなければなりません 

競り市の前日 お湯とシャンプーで汚れをきれいに洗い リンスで毛の手触りを整えます そして競り市に出されるためトラックに他の家の子牛たちと一緒に乗せられ 市場へと運ばれます

声かけて 擦り寄って 手をなめて懐いている子牛を 売るために手放さなければならない その時いつも涙で別れます 信じてくれる子牛を裏切る行為です  いつになっても割り切れない思いです  経済動物だから と言われますが 罪深い私の生業です  需要と供給 世の中のサイクルだから仕方ない 人は動物の命をいただいて人の命を維持している そういう私も牛肉も鶏肉も豚肉も魚も食べています きれい事を言っていても私も同じです 戴いた命に感謝 合掌 を心がけて

うれしいこともあります 名前を ゆずこ と言いますが その子牛が 順調に大きく育ち 立派な母牛候補として 売らないで私の手元に残るのです 自分の家で生まれた有望な子牛を保留できてうれしいです 

毎日の暮らしが成り立つのは 牛さんのおかげ そして 命を預かることは重いです

追記:11月20日 

第22回とちぎの和牛を考える会の講師 九州鹿児島・農業生産法人のざき代表野崎喜久雄さまの公演 内容は ”和牛に対する思い” はわたしの普段の牛さんへの想いと重なり共感でき 牛の飼養頭数の多い少ないにかかわらず命を預かる仕事への責任は同じとの思いを新たにしました 

20010年 春 宮崎県の牛さんたちに大きな受難
口蹄疫という 感染力の強い病気のため発症牛はもちろんですが 同じ農家に飼われている牛 感染する危険の範囲内に飼われている牛さんも全て命を絶たれました 5月14日現在78800頭 

発症牛の農場とその周辺の牛は移動禁止と出荷禁止 と殺を待つ牛にせめてもの愛情と感謝をこめて良質の乾草を食べさせて見送る農家 命を預かる重い仕事です

5月27日 宮崎県で発症が見つかった口蹄疫 現状の悲惨さは筆舌に尽くし難く 想像に余りあり 牛の処分の現場は地獄のようだと言います 人間に命を委ね 人間の命のために飼われる牛さんたち 

牛を処分する現場に立ち会う人たちの辛さ 獣医になったのは牛の命を助けるため病気を治すためで牛の命を奪うためではないと心を病んでしまう獣医さんもいるとか その心情に心が痛みます

7月24日 7月の時点でさ殺処分された頭数は20万頭以上 貴重な優良雌雄牛も特別扱いは許されませんでした 牛さんたちのご冥福をお祈りいたします 合掌

8月27日 東国原知事より口蹄疫終了宣言が出されました 発症から4か月 約29万頭が処分されました 

牛さんたちのご冥福をお祈りいたします 合掌

2011年3月 先の見えない大きな新たな受難 原子力発電所の大気汚染
2011年3月11日 午後2時46分ごろ観測史上最大の大地震が発生しました 東日本大震災です

大地震の後東北地方太平洋沿岸に大津波が押し寄せ 大勢の人の命が奪われました  海岸沿いの町も美しい風景も 人々の平和な幸せな日常がひとつの地震で全て奪われてしまいました 驚きと絶望の中 日本人皆心をひとつに震災からの復興に力を合わせようと立ち上がりました

ところが 復興に大きな障害となる 障害ではなく 被害を期限なく 際限なく拡大する思いがけない原因が現れました 地震と津波による福島原子力発電所の破壊が原因の大気汚染です

半径20キロ 30キロの方々は強制的に避難させられました 福島県は乳牛の酪農家 和牛の肥育や繁殖農家の方も大勢います 仕方なく泣く泣く牛を置いて避難された方 牛を置いて行けず避難しない方 牛を野に放ち避難された方 人間の身勝手に翻弄される罪のない牛さんたち 無力な農家の人たちの哀しみ 牛さんに詫びて牛を想う気持ちはさまざまです

家族同様に飼っている牛 生活をさせてもらうのも牛さんのおかげ 大切な命です 

そして 7月28日現在も事態の収拾どころか拡大の一方です 肥育された牛肉から汚染が見つかり 飼料の稲わらや乾草が原因と見られます 東北 関東にも汚染が拡大 畜産業にも経済にも大きな影響と打撃です 

我が家にも稲わらと乾草の検査にJAの担当のかたが巡回に来ました 幸い収穫の時期的に安心なので乾草の汚染はわずかで問題はありませんでした 

福島県の肥育牛の汚染が見つかり 肉は全国に出回り販売されました 全頭出荷停止措置は宮城県にも 肥育した牛の価格は暴落 安全な牛はと殺後冷凍保存するそうです 国内産和牛への警戒心と風評で牛肉の消費は冷え込み回復の見込みのないまま 8月の始めに控えた子牛のセリ市況への価格暴落も覚悟の繁殖農家です 肥育の方が先の見通しが立たないと子牛を育てる繁殖農家はお手上げです

那須も和牛の子牛生産では高い評価を得てきました 全国牛肉格付けでは 『とちぎ和牛』 『那須和牛』 のブランドの評価も認められて経営のサポート面では順調な体制が整えられていました この降って湧いた見えない災難にどのように立ち向かえばいいのでしょうか ただ 時の過ぎるのを待つしかないのでしょうか

先の見えない 収拾のめども立たない この原発の被害は 人間に 日本人に 何を伝えたいのでしょう 

この物言わぬ牛さんたちに何の罪があるのでしょう      2011年7月28日 記

追記  牛に餌を遣れる幸せ   2011年12月6日 
毎年一回 11月開催のとちぎの和牛を考える会研修講演会は県内の和牛飼育農家 肥育農家 酪農家の方々 県内農業高校の生徒さん 公的農業団体 各種農業団体 獣医師 指導機関 農業関係企業の方々の参加をいただいて開催されています

そして県外からも毎年参加していただいているその中に3.11大震災と原発被害の最短距離で被災された飯館村の和牛農家の方がいました 今回は家を離れ避難先からの参加となりました 

今回は講演会の時間の中で飯館の農家の方のお話を聴かせていただきました 避難という緊急事態の中での状況 牛への想い 辛さ 牛の命を預かる仕事 家畜としての牛 人間の避難と牛への対応 など 涙ながらにその時のことを話してくださいました

牛を置いて人間だけ避難はできないこと 牛より人間の命を優先するように指導されたこと 牛にたくさんの飼料を置いて離れてきたこと 人の手で罪のない牛の命を絶たなければならないこと 命を絶つより野に放して命を天に委ねたこと 危険を承知で時折餌を入れに家に戻っていた人もいたこと それぞれがそれぞれの状況に応じて辛い対応をしたこと

野に放された牛さんのことは安心しました 草を食べて元気に生きていてくれる それだけでいい・・・

愛情かけて牛と共存してきた農家の牛への想い 同じ牛を飼う農家のわたしたちには良くわかります 家族同様であり 牛のおかげで生活できているのです 牛と共に生きている 牛に元気をいただいている 牛の命をいただいて人間の命を繋いでいる そのことを改めて胸に刻みながら聴きました

「牛に餌を遣れる幸せ」 「牛と平穏に暮らせる幸せ」 その言葉が印象深く残ります

命を失った多くの牛さんに合掌

とちぎの和牛を考える会 第22回研修講演会開催  2009年11月20日

県内外から和牛飼育農家・関係機関の方々総勢400名余りの大研修会が開催されます

午前十時から昼食をはさみ夕方五時まで 毎回内容の充実した和牛飼育に関する有意義な研修の一日です

栃木の和牛を考える会は 和牛飼育農家の自主的な設立団体です JA 経済連 県の農業機関 畜産関係の団体などどの大きな組織にも属さず 和牛経営の研鑽を目的としています そういう組織が長年継続して年々参加人数が増えているのは類がないということです              

あかね雲も接待スタッフとしてお手伝いをさせていただいて 福田知事さんが主賓挨拶においでくださり接待の役目をさせていただきました 光栄に思っています 

とちぎの和牛を考える会  第24回研修講演会開催   2011年11月22日

あかね雲は 講師の先生 招待の方 関係機関の方々への接待スタッフとして 毎年お手伝いさせていただいています 講師の先生のお人柄にも接することが出来て役得です 

講習後の大抽選会では参加者に和牛の精液が当たる抽選会が人気です 名牛の精液や受精卵が当たるかどうか 当たる期待にドキドキしながら抽選する人と当選者を読み上げる声に一喜一憂します

会場のホテルエピナール那須を出ると綺麗な夕暮れのあかね空でした

那須の里山花図鑑